菅原魁人 さん

【プロフィール】

株式会社LibertyGate
代表取締役 菅原魁人 さん
【R6年度AKISTA認定スタートアップ】

1999年生まれ、秋田市出身。
2019年、秋田大学在学中に、「あきたビジネスプランコンテスト2019((公財)あきた企業活性化センター主催)」でヤングビジネス賞を受賞。同年、高齢者支援サービス「アシスタ」を開始した。2020年7月、大学3年生の時に「高齢者になることが待ち遠しいと思える社会を創り出す」をミッションに掲げ、株式会社LibertyGate(リバティゲート)を設立。現在、「アシスタ」のフランチャイズを全国約40地域にまで拡大している。2024年7月、AKISTA認定スタートアップに選定。


全国へ広がる「アシスタ」の可能性と共創の取り組み

−まず始めに、「アシスタ」のサービス内容や特徴について教えてください。

「アシスタ」は、高齢者の暮らしをサポートするサービスです。介護保険サービスで賄えない病院の付き添いや買い物代行、冬の雪かき、夏の草取りなどのちょっとした困りごとに対して、主に大学生がサポートしています。現在、秋田市だけで月に1,200~1,300件の依頼があり、7割がリピーターです。サポート側としても、医療福祉分野を目指す学生にとってはいい経験になるし、県外出身の学生は秋田弁の勉強になると言ってましたね。最初は業務的な依頼だけだったのが、だんだん仲良くなって、一緒にお出かけしたり食事したりする依頼に発展することもあり、想定していなかった価値を提供できているのもうれしいです。

本を読む人

−「アシスタ」を基盤に、他にもさまざまな事業を行われているんですよね。

現在、「アシスタ」は全国約40地域にフランチャイズ展開していて、月に1~3社のペースで拡大中です。創業してすぐにNHKで全国放送にとりあげてもらい、それを見た人から「同じことをやりたい」という声をもらったことがきっかけでフランチャイズをスタートしました。秋田県大仙市と三重県四日市市に最初の拠点を作ったのが、創業してから2年後です。現在は都心部にも拠点がありますが、高齢者のニーズは地方と変わらないですね。

高齢者の課題を根本から解決するため、「アシスタビジネス」という取り組みも行っています。これは「アシスタ」で得た高齢者データを、シニア向けの商品・事業開発を行う企業に役立ててもらう仕組みです。これまで、新商品の実証実験や製品開発前のニーズ調査など、県内外30社以上と連携実績があります。当社だけでは膨大にある高齢者の課題をすべて解決することは不可能なので、こうして他社と「共創」して根本解決に進んでいければと思っています。

また、社会貢献に関心のある学生向けコミュニティ「S-Lab」も運営しています。イベントを通じて学生同士が繋がる場や活動できる場を提供していて、そこからアシスタに興味を持つ学生もいます。学生たちがアシスタと自然につながれる仕組みを作って、人材の良い循環を生み出したいですね。

笑顔

先輩経営者の「応援」と、芽生える「使命感」が力に

−秋田で起業したきっかけについて教えてください。

もともと「起業したい」という気持ちがあったので、何をするかずっと考えていました。そんな中で大きなきっかけになったのは、大学1年生の時、友人が主催したイベントで秋田の起業家たちに出会ったことです。彼らは当時30代だったんですが、大学生の私にもフラットに接してくれて、「友だちと遊ぶのも楽しいけど、こういう人たちと一緒にいるのも楽しい!」って思ったんです。事業アイデアに的確なアドバイスをくれたり、大きな背中を見せながらも、自分の「起業したい」という気持ちに寄り添ってくれる人たちでした。そのおかげで、学生起業に踏み切れたんです。秋田で学生起業したからこそ、学生がプレイヤーとなるサービスを作れましたし、出身地ならではのつながりも活かして、利用者に育ててもらえる事業になったと感じます。

(事業についてピッチする菅原さん)
(事業についてピッチする菅原さん)

−秋田で起業する魅力についてはどうお考えですか?地域ならではのポテンシャルなどもあれば教えてください。

大前提として、熱量さえあれば秋田じゃなくてもどこでだって起業できると思います。ただ、秋田は起業家の数が少ないからこそ、応援してくれる人が多いというメリットがあります。これから秋田でスタートアップが増えていけば、その状況も変わるかもしれませんが、今のタイミングならこうした「先行者利益」は大きいと思います。もちろん、秋田だけで大きなマーケットを作るのは難しいですが、ITを活用すれば会議や営業はどこでも可能なので、秋田で起業できない理由をあまり感じないんですよね。

秋田で起業すると「使命感」みたいなものが芽生えるのも、力になりますよ。都会では人とのつながりが一過性になりやすいイメージがありますが、秋田では深い関係が築ける。それが「ここで事業を続けよう」という私の原動力になっています。

取材の様子

解決したい社会課題と若手スタートアップへの思い

−事業を通じて解決したい秋田の課題や社会課題は何でしょう?

私たちの事業の根本には、「介護業界の課題を解決したい」という想いがあります。高齢者の生活課題は多岐にわたりますが、それを解決する主軸はやっぱり介護事業です。私たちは介護保険外のサービスを提供しているので、主軸である介護事業者の方々が頑張っている現場にどう関われるか、という視点で常に考えています。

また、秋田にもっと若い世代のスタートアップが生まれるといいなとも思っています。私自身、上の世代の方々に支えられてここまで来たので、次の世代に恩恵を返す役割を担うなら自分だろう、と感じていますね。

−今後の事業の展望について教えてください。

まずは「アシスタ」のエリアをさらに広げて、事業基盤をしっかり作りたいです。その上で、サービスのレベルアップや新しいモデルも考えていきたいですね。今の事業内容を「ちょっとずらして考える」と、様々な領域に挑戦できると思うんです。

そして将来的に、アシスタを基軸とした経済圏を作りたいと考えています。例えば、アシスタの利用でポイントを貯めて、そのポイントでいろいろなサービスを受けられる仕組みです。また、アシスタビジネスで生まれた商品を物販やサブスクモデルに組み込むことも可能だと思っています。高齢者ビジネスのプラットフォームとして、地域や利用者にもっと貢献できるようにしていきたいですね。

パソコン操作を教えている様子

リスクを恐れず一歩踏み出す勇気を

−AKISTA認定スタートアップに選ばれた感想や、認定後の変化について教えてください。

認定されてからイベント登壇やメディア露出など多くのPR機会をいただけて、事業の認知度が高まったと感じます。うちは「形」が見えづらいサービスなので、認定を通じて事業への理解が深まったり関心が高まることは本当にありがたいです。

また、中長期的な経営課題に目を向けられるようになったことも大きな変化です。コンサルの方々とのコミュニケーション量が多く、アドバイスをもらいながら優先すべき事項を整理して取り組めるようになりました。今後は秋田だけでなく、県外での認知拡大を後押ししてもらえるとさらに嬉しいですね。

−秋田を起点に起業や事業成長を考えている方へメッセージをお願いします。

私は最初、「起業がゴール」みたいに思っていたんです。でも今は、事業をスケールさせていくことが社会にとっても価値があるんだと信じて、挑戦を続けています。なので、自分もまだまだ成長途中の身ですが、スタートアップを目指すならまず行動することが大事だと伝えたいですね。何かを始めるとき漠然とした不安を感じる人が多いと思いますが、実際にどんなリスクがあるかを具体的・定量的に考えると、「たとえ失敗しても、これなら耐えられるかも」と思えるケースが多いです。それに、リスクに対処する時間のことを考えれば、行動を起こすのは早ければ早いほど良いと思いますね。

秋田には支援してくれる人がたくさんいますし、やりたいことがあるなら、思い切って挑戦してみてほしいです。うまく流れに乗れるのは10回のうち3回くらいで十分。損はないので、漠然としたリスクを恐れず、流れが来たらまずは飛び込んでみてください!

取材の様子

(2024年12月インタビュー)


【株式会社LibertyGate】
設立:2020年7月20日
住所:〒010-1437秋田県秋田市仁井田緑町2-21
URL:https://libertygate.jp/